INTERVIEW

アンケート調査報告|クラウドファンディング実施病院の「本音」 〜200以上の病院が、なぜ取り組み、どう成功したのか?〜

    2025/09/30 05:50

    READYFORではこの度、過去にクラウドファンディングにご挑戦いただいた病院を対象にアンケート調査を実施しました。この記事では、クラウドファンディングの経験者であるゲストのお二人とともに、調査で得られた客観的なデータを読み解き、実施病院の「リアルな声」をお届けします。

    ※ 本調査のサマリーレポートは下記よりダウンロードいただけます。

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    目次


    登場人物

    ※本文中 敬称略。詳細プロフィールはページ最下部をご覧ください。

    社会医療法人友愛会 法人事務局 コミュニケーションデザイン室 室長

     和田 将央 様(2024年クラウドファンディング実施)

    筑波メディカルセンター 法人管理本部 総務部 経営企画課 広報係

     遠藤 友宏 様(2021年クラウドファンディング実施)

    READYFOR 医療部門 多田 絵梨香


    調査概要

    本調査は、クラウドファンディングサービス「READYFOR」にて、2023年〜2024年の間に支援募集を終了した病院を対象として実施いたしました。

    (調査概要)

    多田:調査対象のうち6割近い病院様にご回答をいただきました。改めて調査にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

    セクション1|実施のきっかけや院内決裁の裏側

    ・クラウドファンディング実施のきっかけ

    「自院の取り組みに関する認知度の向上・情報発信力の強化」が7割以上と最も多く、次いで「院内職員の一体感の醸成・モチベーションの向上」「地域住民や自組織の利用者などのファンづくり」の順に多い結果でした。その一方、「資金確保 / 予算の優先度が上がらない領域への補填」は全体の2~3割程度と限定的でした。

    (クラウドファンディング実施のきっかけ)

    多田:資金調達だけでなく、付加価値に期待される病院様が多いことが分かり、私達としても少し意外な結果でした。

    ・クラウドファンディングを立案推進した方

    事務長が4割以上と最多で、次いで院長、医師という結果となりました。経営層の方がクラウドファンディングを推進される傾向が高いことがうかがえます。

    (※サマリーレポートでは、病床数や法人格別の集計結果もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、病床数や法人格別の集計結果もご覧いただけます)

    和田:私達の場合は、ドクターカー導入に強い意向を持つひとりの医師の発案をきっかけに、現場が中心となってボトムアップでクラウドファンディングを推進した形でした。「地域の皆様に急性期医療やドクターカーの役割を知っていただきたい」という想いも重なり、クラウドファンディングという手段を選びました。

    遠藤:当院の場合は、代表理事からの提案がきっかけでした。緩和ケア病棟の家族控室改修という計画に対して、コロナ禍の影響もありなかなか予算の見通しが立たない中、「クラウドファンディングで実施したらどうか」という一言をいただいたのです。現場としては「クラウドファンディングはニュースなどで聞いたことはあるけれど、まさか自分たちがやるとは全く思っていなかった」というところからのスタートでしたね。

    ・院内からの反対意見や対策

    クラウドファンディング実施にあたって「反対意見はなかった」という病院が約4分の3、反対意見もあったが説得をして実施できたという病院が約4分の1でした。反対意見の内訳として最も多かったのは「自院に寄付が集まるか不安」、次いで「設定しているテーマで寄付が集まるか不安」「新しいことを始めるのに抵抗があり、やりたくない」などでした。

    (※サマリーレポートでは、病床数や法人格別の集計結果、反対意見の内訳もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、病床数や法人格別の集計結果、反対意見の内訳もご覧いただけます)

    和田:私達の場合も、「なぜわざわざクラウドファンディングをやるのか」「支援が集まらなかったら恥ずかしいのではないか」など、いくつか個別に反対意見をいただくことがありました。そうした方々に対しては、医師や私達から個別に説明する機会を設けることで、最終的に納得いただくことができました。

    多田:具体的にはどのような説明を…?

    和田:他の病院様での類似事例やREADYFORさんのサポート実績といったエビデンスと、現場のスタッフの「とにかく本気で絶対にやり遂げます」という覚悟、その2点ですね。医師が理事会で熱のあるプレゼンテーションをしたことも効果があったと思います。

    多田:なるほど、ロジックやデータと熱量をフル活用され、ご納得いただいたのですね。

    セクション2|テーマ検討やプロジェクトチーム編成のポイント

    ・テーマ選定で最も重視した点

    「地域や利用者から共感を得られるテーマ」が圧倒的に多数でした。テーマ選定のプロセスとしては「上層部の会議で検討しトップダウンで決定」が約4割と最も多く、次いで「クラウドファンディングのプロジェクトチームを組成し、そのチーム内で決定」が約3割でした。

    (※サマリーレポートでは、テーマ選定のプロセスの集計結果もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、テーマ選定のプロセスの集計結果もご覧いただけます)

    遠藤:「地域や利用者からの共感」は本当に重要なポイントですね。実際に支援を集める広報施策においても、強みをアピールするだけではなく、いかに共感してもらうかがポイントになってくると思います。

    和田:私達も「高規格救急車を導入したい」というだけでなく、「導入することで地域の方々にとってどういうメリットがあるのか」という意義については常に考えながら広報活動に取り組みました。

    多田:テーマ選定についてご相談をいただくことも多いですが、「プロジェクトチームを組んで議論したらどうか」「職員さんへのアンケートを実施したらどうか」といったご提案を、よくさせていただいております。

    ・プロジェクトチームの人数や役職

    10人以上でチームを組んだ病院が約4割を占めており、ほぼすべての病院が複数人でチームを構成していました。また、経営層・事務方・医師などといった、さまざまな職種の方がプロジェクトに関わっていたことがわかりました。

    (※サマリーレポートでは、病床数別の集計結果、役職の内訳もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、病床数別の集計結果、役職の内訳もご覧いただけます)

    遠藤:当院は5〜6人でチームを構成しました。病院アート活動を担当している広報課のメンバー3〜4人に加えて、病棟の看護師長と緩和医療科の医師が入った形で、結果的に小回りが効いて動きやすかったですね。

    和田:私達は救急科に関連する多職種を中心に13名程度でプロジェクトチームを組みました。その中でも、重要な意思決定に関しては5名のコアメンバーが担い、コアメンバーがリーダーシップを取りながら全体を動かしていく体制でした。コアメンバーはシニア・若手関係なく、各職種の中で責任を持って業務を進められる人間を選びました。

    多田:クラウドファンディングの実施にはさまざまな作業が伴いますが、やみくもに人数を増やせばいいものでもなく、細やかに意思決定ができる体制作りが大切なのですね。

    セクション3|どんな広報施策でどんな方々から支援が集まった?

    ・支援者の内訳

    支援金額ベースでは「患者さん/ご家族の方等、通院歴がある地域の方」が3割以上と最も多く、次いで「地元の開業医等、連携医療機関」「取引先の企業」が約2割と、法人からの支援によるインパクトも大きいことが分かりました。一方、支援者数ベースでは「患者さん/ご家族の方等、通院歴がある地域の方」が6割以上と、より高い割合となりました。

    (※サマリーレポートでは、テーマ別の集計結果、支援者数ベースでの集計結果もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、テーマ別の集計結果、支援者数ベースでの集計結果もご覧いただけます)

    和田:当院でも、人数ベースでは患者さんやその家族、通院歴のある方からのご支援が最も多く、全体の7〜8割という結果でした。金額ベースではやはり法人からのご支援が約6割と、大きなインパクトがありました。病院の方針として、今回は地元の開業医や連携先には直接アプローチしなかったため、日頃あまりお付き合いのない法人様などをご訪問してご支援をお願いするという、かなり大変な作業を地道に行いました。結果、ほとんどの法人様が訪問を受け入れてくださり、多くのご支援にも繋がりました。

    遠藤:当院も、患者さんのご家族、特に緩和ケアに入院されていた患者さんのご遺族からのご支援を多くいただきました。連携医療機関には地域医療連携課から声かけをしてもらい、力強いご支援をいただきました。

    ・支援を集めるための広報施策

    さまざまな広報施策の回答が集まり、病院や対象者によって工夫をしながら実施していることがうかがえる結果となりました。

    (クラウドファンディングの広報施策)

    和田:私達の場合、まず一番に力を入れたのはメディア対応でした。記者会見を実施したことで多くのメディアに取り上げていただき、一気に認知が広がりました。翌日には匿名の方が100万円を持って来られるなど、驚くような効果にも繋がりました。また、先程も話題に出た地元の法人や経済団体への個別訪問は、非常に時間も手間も掛かったのですが、救急部長と私で回り、一定のご支援をいただくことができました。あとはやはりSNSの力で、東京など遠方からのご支援にも繋がりました。

    遠藤:当院では、職員ひとりひとりからの情報発信が大きな力になりました。実はクラウドファンディング期間中、職員向けのデジタルサイネージで毎日数字の進捗を出し続けていたんです。プロジェクトメンバー以外の職員も「昨日すごい増えてたね」「最近止まってるけどどうしてるの?」と興味を示してくれるようになり、その結果、個人のSNSアカウントで拡散してくれたり、取材のタイミングでクラウドファンディングの話をしてくれたり、といった動きに繋がりました。院内に理解者を増やしていくというアプローチが、当院にはあっていたのかなと思います。

    多田:それぞれの病院様にあった広報施策でご支援を集めることが重要なのですね。

    セクション4|得られた副次効果や振り返り

    ・クラウドファンディングを経てよかったこと、大変だったこと

    よかったこととしては「自院の取り組みを発信(広報・PR)できた」が97.6%と非常に高い結果となりました。「支援者からの応援メッセージが励みになった」「運営は大変だったが達成感があった」「既存患者・地域とのつながりが強化された」「地域からの評価を体感できた」も7割以上と、多くの病院がメリットに感じていました。

    また、大変だったこととしては「支援依頼の個別連絡」が6割と最多、次いで「広報先リストアップ」という結果でした。一方、「院内外からのネガティブな反応」「問い合わせ対応」などが大変と感じた病院は1割前後と限定的でした。

    (※サマリーレポートでは、「大変だったこと」の集計結果もご覧いただけます)

    (※サマリーレポートでは、「大変だったこと」の集計結果もご覧いただけます)

    多田:クラウドファンディング実施のきっかけとして「認知度の向上・情報発信力の強化」が最も多かったことをふまえて、結果的にその効果をしっかりと実感いただけた病院様が多いということは、私達としても非常に嬉しいことです。問い合わせ対応や、ネガティブな反応への対応が「大変だった」というお声が少ないことは想定外で、ありがたい結果でした。

    遠藤:広報施策の計画をたてるために実施したステークホルダーのリストアップ作業は、大変な作業ではありましたが、クラウドファンディングをやらなかったら、ここまで整理して考える機会はなかったのではないか、と価値を感じています。病院としての今後の広報活動を考えるうえでも、貴重な財産になりました。

    和田:同じく、ステークホルダーの見える化と、その情報をアップデートができたという点は、私達にとってもすごく価値があったなと思います。クラウドファンディングをきっかけに、地元の法人様との関係ができたり、私達を支えてくださる皆様の顔が見えたのはやはりすごく大きかったなと。また、改めて地元の皆様からの感謝の言葉が見える化されたことは、職員にとって本当に大きな励みになりました。

    ・READYFORのサービスを利用して満足したこと

    「プロジェクトページの作成」が8割以上と最も多かったほか、「広報・発信のための実務サポート」「プロジェクト設計」が7割前後と多い傾向にありました。

    (READYFORのサービス)

    和田:プロジェクトを進めていく中で「どうしていいか分からない」という先の見えない状況も正直あったのですが、担当のキュレーターさんが的確にアドバイスをくださったおかげで、途中では『本当に達成できるのか?』という危機感を覚えながらも、最終的に目標達成できたと思っています。本当に感謝しています。

    遠藤:プロに入っていただくことで、広報施策のテクニックや考え方など、たくさんのことを学ばせていただいたと思っています。院内の広報担当メンバーの間では、すっかりクラウドファンディングで培った広報の考え方が根付いていて、自然と議論が生まれているんですよ。

    多田:そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。

    ・再度クラウドファンディングを実施することについて

    7割以上の病院が、再度クラウドファンディングを実施する意欲があることがわかりました。

    (再度クラウドファンディングの実施について)

    遠藤:院内スタッフからもしアイデアが出てくれば、ぜひまた別の切り口でクラウドファンディングに挑戦したいなと個人的には思っております。

    和田:クラウドファンディングに挑戦して、非常に勉強になった部分が多い一方で、「ああすればよかったな」という後悔の部分もすごくあります。そういったところを上手く活かしていけるように、今後何かクラウドファンディングの案件があればぜひ積極的にやっていきたいと思っています。

    多田:アンケートにご回答いただいた皆様にとって、1回目のクラウドファンディングのご経験が非常に良いものであったということと受け止め、嬉しく思っています。


    ※ 本調査のサマリーレポートは下記よりダウンロードいただけます。

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    ※ 本記事は、2025年8月25日に実施したウェビナー【クラウドファンディング実施病院へのアンケート調査結果報告 クラウドファンディング実施病院の「本音」 〜200以上の病院が、なぜ取り組み、どう成功したのか?〜】の内容をもとに作成いたしました。


    話者のご紹介

    社会医療法人友愛会 法人事務局 コミュニケーションデザイン室 室長

    和田 将央 様

    大学卒業後、国内大手広告グループや外資系広告会社等にて、大手通信会社や生活消費財メーカーなど民間企業のマーケティング戦略からCMなどのクリエイティブやイベント、映像などのプロモーション施策の企画・制作に至る幅広い業務を担当。

    2020年、社会医療法人友愛会に入職。企画広報課を設立し、広告業界での業務経験を活かした広報活動を展開。特にメディアリレーションにおいては、新型コロナ関連報道をはじめとして延べ170回を超えるマスコミ取材に対応した。

    2024年に実施した高規格車導入に伴うクラウドファンディングの広報活動を通じて医療機関の地域化の必要性を実感、2025年4月、広報による情報伝達から交流による相互理解へと業務を再定義し、コミュニケーションデザイン室を設立。PRSJ認定PRプランナー。

    ▼クラウドファンディングのご挑戦の裏側が詳しくわかるインタビュー記事はこちら

    友愛医療センター様|クラウドファンディング成功の陰の立役者。広報が作った支援者の輪の広がり


    ・公益財団法人筑波メディカルセンター 法人管理本部 総務部 経営企画課 広報係

    遠藤 友宏 様

    旅行業界を経て、2012年に公益財団法人筑波メディカルセンターへ入職。2015年6月より当法人の広報担当となり、広報誌の企画編集、PR動画制作、公式SNSの運営、プレスリリースの配信などを担当。

    2021年に実施した緩和ケア病棟家族控室の改修に関するクラウドファンディングでは、広報・PR実務を担い、プロダクト完成後に配信したプレスリリースが株式会社PR TIMESが主催するプレスリリースアワード2022にて「ヒューマン賞」を受賞。

    2023年10月より株式会社PR TIMES公認 プレスリリースエバンジェリストとしても活動し、NPO法人、訪問美理容系スタートアップ企業のプレスリリース支援、小美玉市と協働した住民向けイベント企画などにも参画。

    クラウドファンディング ページはこちら

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    READYFOR株式会社 医療部門

    多田 絵梨香

    2007年東京大学経済学部卒業。外資系製薬企業でのMR・抗がん剤のマーケター、医療系学会事務局での広報、イベント運営、新専門医制度対応の仕組み構築、医療スタートアップでのオンライン診療・服薬指導事業立ち上げ、事業リード、パブリックアフェアーズ、採用、広報等を経て、READYFOR株式会社に入社。

    現在は医療機関・学会・患者団体・医療関連企業等の新しい挑戦に、“資金“と”想い“をつなぐべく、ファンドレイジングコンサルタントとして、医療分野でのクラウドファンディング活用定着等を担当。

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