INTERVIEW

単年で病院クラウドファンディングが60件、10億円を突破した2025年。最新データと成功事例が示唆する5つの法則。 

    2026/03/16 03:19

    2025年は、多くの医療機関にとって病院経営に逆風が吹いた1年でした。診療報酬改定による収益が伸び悩み、物価や人件費も高騰。経営の舵取りが難しくなる中でも、病院は地域医療を日々守り続けていらっしゃいます。

    そんな2025年、READYFORでクラウドファンディングに挑戦された病院は60施設を超え、過去最多を更新しました。病院の挑戦がメディアで報じられる機会も大きく増え、社会的な関心はかつてないほど高まっています。

    「病院の苦境を、地域の共感で支える」。

    資金調達の枠を超え、地域医療のあり方を再定義したこの1年。医療機関によるクラウドファンディングの支援総額はついに単年で10億円を突破し、累計では40億円を突破しました。

    今回は、データを紐解くことで見えてきたトレンドや、実施テーマ別に象徴的なプロジェクトをご紹介します。

    ※「病院クラウドファンディングプロジェクト2025年最新動向データ」は下記よりダウンロードいただけます。

    >> 資料をダウンロードする(無料)

    目次

    2025年全体の傾向

    過去最多となる60以上の施設にクラウドファンディングを活用いただいた2025年。今、医療現場の最前線でどのような資金調達の動きが起きているのか、データから見えた「3つの傾向」をお伝えします。

    傾向1:救急車の資金調達プロジェクト件数が約2倍に

    地域医療の象徴である救急車の更新・導入プロジェクトが急増。住民にとって最も恩恵がわかりやすく、自分たちの命を守る装備として、非常に高い共感を集めました。

    なお、救急車プロジェクトはこれまでに累計で45件実施されており、支援金額の中央値は約2400万円と多くのご支援が集まってきました。

    傾向2:公的病院の活用が2倍に拡大

    「自治体等から運営費負担金を受け取っているのに、寄付を募ってもよいのか」と懸念される病院様もいらっしゃいます。

    しかし、クラウドファンディングを通じて寄せられる資金は、これまでの医療提供に対する「感謝」や「応援」、そして未来への「期待」が込められたご支援であり、運営費負担金とは性質が異なるものと捉える病院様が増えております。

    その結果、2025年は過去最多となる数の公的病院(公立病院、地方独立行政法人、JCHO、NHO等)にご活用いただく1年となりました。


    傾向3:大型プロジェクトの複数成立

    これまでの支援金額の中央値・1,200万円を大きく上回る、3,000万円以上の支援が集まったプロジェクトが約2倍に。救急車やファシリティドッグなど、社会的な意義が明確なテーマであれば、1回のクラウドファンディングで3,000万円を超えるようなご支援も集まるフェーズに移行したといえるでしょう。

    2025年・クラウドファンディング実施事例のご紹介

    この1年で、クラウドファンディングの活用シーンは、医療現場の多様な課題に応える形で広がりを見せています。命の最前線を支える「医療機器の導入」から、患者さんの療養環境を改善する「設備改修」、さらには「ソフト面の強化」まで、多岐にわたる成功事例が誕生しました。

    ここでは、2025年のトレンドを象徴するプロジェクトを「実施テーマ別」にご紹介します。貴院でも近しい課題やニーズがあられるかもしれませんので、ぜひご覧ください。

    【テーマ】医療機器の導入のための資金調達

    【事例】一分一秒を争う現場。命を繋ぐ⾎管撮影装置の更新にご支援を|相澤病院

    • 実施主体:社会医療法人財団慈泉会相澤病院(長野県)

    • 資金使途:血管撮影装置の更新費

    【事例】海をわたり島の人々の命をつなぐ。巡回診療船「済生丸」が運ぶ希望の光

    • 実施主体:瀬戸内海巡回診療事業

    • 資金使途:搭載する医療機器の更新費

    【事例】ひっ迫する命の現場を守り抜く、地域医療の体制強化へ

    • 実施主体:社会福祉法人北海道社会事業協会富良野病院(北海道)

    • 資金使途:「麻酔管理システム」の購入費

    【テーマ】設備改修のための資金調達

    【事例】患者さんの「時間」と「心」を大切に。“思いやり”でつなぐ医療!

    • 実施主体:地方独立行政法人公立甲賀病院(滋賀県)

    • 資金使途:院内のWi-Fi整備費

    【事例】医療の地域格差に立ち向かう。切れ目のない不妊治療の提供へ|穂高病院

    • 実施主体:医療法人仁雄会穂高病院(長野県)

    • 資金使途:新棟建設費

    【事例】手術を待つ患者さんのために。手術室の増設・環境整備にご支援を!

    • 実施主体:独立行政法人関東労災病院(神奈川県)

    • 資金使途:増設する手術室1室の工事費用、設備・機器購入費

    【テーマ】その他の資金調達事例

    【事例】子どもたちの未来を育てたい。子育て支援棟に3,000冊の図書を!

    • 実施主体:社会医療法人潤心会熊本セントラル病院(熊本県)

    • 資金使途:子育て支援棟の図書購入費

    【事例】おせっかいが街を救う!?未来を創る病院プロジェクト!

    • 実施主体:医療法人社団鴻愛会こうのす共生病院(埼玉県)

    • 資金使途:専従スタッフの人件費及び、コミュニティナース活動における諸経費

    【事例】また、運転できた。その喜びが人生を変える。

    • 実施主体:医療法人和光会山田病院

    • 資金使途:ドライビングシミュレーター2台分の導入費

    最新・クラウドファンディング実施傾向データ

    ここでは、これまでに実施された病院クラウドファンディングの傾向について、「病床数規模」「法人格」「エリア」の3つの切り口からデータをご紹介します。

    【病床数規模】病床数に応じ支援金額の大小は変わるものの、幅広い病床規模の病院で実施可能

    病床数規模別に見ると、有床病院の中では幅広い規模の病院様にご活用いただいていますが、日本全体の病院数の分布と比較すると、199床以上の病院様の実施比率が高い傾向にあります。特に2025年単独で見ると、400床以上の病院様が全体の半数を占めました。

    また、病床数規模が大きくなるほど支援金額(中央値)も高くなる傾向が見られ、600床以上の病院様では中央値が約2,900万円に達しています。

    【法人格】公的病院の実施が最多に

    民間病院、大学病院、公的病院など、様々な法人格の病院様で万遍なくご実施いただいています。年次ごとのトレンドを見ると、2023年は社会福祉法人、2024年は社会医療法人の活用が増加していましたが、2025年は公的病院での実施が最多となる1年でした。

    支援金額で見ると、寄付金控除の対象となる法人格(公的病院や社会福祉法人など)は中央値が1,700万〜2,000万円程度と、全体の中央値を大きく上回る支援を集めています。また、控除対象外の法人格の中でも、社会医療法人は中央値1,200万円超と高い水準を保っています。

    【エリア】関東以西の実施引き続き多い。都市部や北海道でも増加傾向。

    エリア別の実施比率では、これまで同様に関東以西での実施が大半を占めています。都道府県別に見ると、東京、大阪をはじめ、埼玉、愛知、北海道などで多く活用されています。2025年の特徴としては、北海道や関東・近畿などの人口が比較的多い都市部での実施が増加したことが挙げられます。一方で、各エリアで集まる支援金額の中央値は1,000万円〜1,800万円ほどで推移していますが、必ずしも「そのエリアに住む人口の多さと支援金額が比例するわけではない」という点も興味深いデータです。

    最新データと成功事例が示唆する“5つの法則”

    前段のデータや多種多様な成功事例から、病院クラウドファンディングを成功に導くための「5つの法則」が見えてきました。

    法則1(テーマ):救急・急性期医療をテーマとするプロジェクトは、地域から大きなご支援を集める傾向にある

    「傾向1」でも触れた救急車の更新をはじめ、相澤病院様や関東労災病院様など、一刻を争う急性期医療をテーマとしたプロジェクトは、地域の個人・法人の皆様から非常に強い共感を呼び、支援金額も大きく伸びる傾向にあります。「地域の命を守る要」への支援は、クラウドファンディングにおける最も王道で力強いテーマと言えます。

    法則2(地域課題の解決):急性期領域でなくても、病院が「地域課題をどう解決したいか」という姿勢に支援が集まる

    急性期領域でなくても、病院様が独自の強みを活かして地域課題を解決しようとする姿勢には、しっかりとしたご支援が集まります。少子化が進むエリアでの不妊治療体制の整備を目指した穂高病院様や、病気で運転を諦めないためのドライビングシミュレーター導入を掲げた山田病院様のように、特定の課題解決を目指すプロジェクトは、多くの賛同を得て成功を収めています。


    法則3(プロジェクト設計):受益者が少ない資金使途であっても、適切な設計ができたでプロジェクトは十分に成立する

     一般的に、そのプロジェクトによる恩恵を受ける人(受益者)が多いほど、支援者数や支援金額は伸びやすい傾向にあります。しかし、富良野病院様、瀬戸内海巡回診療事業様、熊本セントラル病院様の事例が示すように、必ずしも受益者が多くない資金使途であっても、「なぜそれが必要なのか」という意義を丁寧に紐解き、適切なプロジェクト設計を行うことで、十分に目標を達成することが可能です。


    法則4(多様なアプローチ):「命を救う」ことに直結しない療養環境改善や地域福祉活動でも、強い共感を呼ぶことができる

    クラウドファンディングのテーマは、直接的な診療に関するものに限りません。公立甲賀病院様のように患者さんの利便性を高める「療養環境の改善」や、こうのす共生病院様のように人のつながりをつくり、人を幸せにし、町を元気にする「地域福祉活動」など、“命を救う”ことに直結しないテーマであっても、多くの方の共感と支援を集めることができます。

    法則5(制度):寄付金控除が適用されない法人格でも、「想いの強さ」が支援額を引き上げる

    寄付金控除の対象となる法人格に集まる支援金額の中央値は高い(1,700万〜2,000万円程度)傾向があります。しかしながら、控除が適用されない「社会医療法人」のプロジェクトでも中央値は1,200万円を超えております。この事実は、税制優遇の有無以上に病院が発信する社会的意義やメッセージの強さや、プロジェクトに応援を募る発信活動こそが、共感と支援を集める最大の原動力であることを物語っています。

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    2025年は、病院経営が大きな岐路に立たされる中で、クラウドファンディングという「共感の力」がこれからの地域医療を支え、新たな可能性を切り拓くための原動力となりました。


    私たちはこれからも、医療を守り抜きたい切実な願いと、それを応援したい気持ちに寄り添い、歩みを進めてまいります。


    2025年の病院プロジェクトにおける最新動向をまとめた資料をご用意いたしました。

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