INTERVIEW
医療法人尚豊会 みたき総合病院
〜199床
民間
物品購入
2025/07/22 04:00

医療法人尚豊会 みたき総合病院クラウドファンディングチームの、理事長・古橋先生、緩和ケア病棟看護師長・渡邊様、事務方・山浦様、理学療法士・後藤様にクラウドファンディング実施の経緯や、実施してみてのご感想などお話を伺いました。
医療法人尚豊会 みたき総合病院
三重県・病床数199床・職員数628人
クラウドファンディングプロジェクト
資金の使い道:LOVOT(ラボット)の導入
動機:コロナ以降疲弊している病棟スタッフ様、入院患者様に癒やしを与えるラボットの導入を決意。地域への広報発信、院内の組織づくりへの効果を期待し、クラウドファンディングを活用。
成果:地域はもちろん、院内の機運が高まり、院内の組織コミュニケーションが改善。率先して活動するスタッフが増え、組織風土が変わった。
目次(前編)
ー まずは地域における、みたき総合病院様の役割と特徴をお聞かせいただけますか。
古橋先生
当院は、三重県の四日市市にある199床を有する地域密着型の中小規模の総合病院です。創業者である父は産婦人科の医師なので、当院は産婦人科を主軸として立ち上がり、そこに社会の変化やニーズに対応して様々な機能を追加していったという経緯があります。
現在は、主には慢性期のポストアキュートつまり急性期治療が終わった後、引き続き医療管理が必要な患者様が多く来院されております。一般病床以外に、地域包括ケア病床、回復期リハビリテーション病床、療養病床、産婦人科病床に加え、四日市で唯一の緩和ケア病床を有しています。
また2019年からは訪問診療も開始。緊急時に在宅で療養を行っている患者様が入院できる病床を常に確保していることなど、24時間体制で在宅医療に取り組むことが出来る在宅療養支援病院の認可も受けています。出産・分娩から在宅医療まで患者さんにシームレスな医療を提供する体制が整っているのが大きな特徴です。
―今回は、LOVOT(ラボット)の導入というミッションが前提にあってのクラウドファンディングだったのですよね。
古橋先生
はい。当院においては、資金使途が明確に決まっていました。ラボットは癒し効果が高く、またやる気を引き出す効果もあるとされているAIロボットです。
当院には緩和ケア病棟があるのですが、緩和ケア病棟は積極的な治療を終了したがん患者様が、がんに伴うさまざまな症状を緩和する場所です。私たちは、患者様がその人らしく、尊厳をもって過ごしていただけるよう支援するとともに、病院とわが家の間にある「もうひとつの家」として、大切な時間を快適に過ごしていただくことを基本理念としています。
しかし、夜間に訪れる不安や寂しさはとても大きく、落ち着きがない状態になる方もいらっしゃり、病棟のスタッフだけでは全てを受け止めきれていない現状があります。そんな患者さまの不安や寂しさに対応ができないかとラボットの導入を考えました。同時に、職員のメンタル面のケアなど職場環境の改善にも繋げることができればとも考えていました。

(まるで生き物のような振る舞いをし、セラピー効果もあるラボット。写真は、みたき総合病院様に後日お迎えした「ここ」ちゃん。)
―クラウドファンディング実施にあたり不安な点はありましたか?
古橋先生
成功するだろうか、という不安はやはりありました。理事長に就任後、1番最初に経営企画室として取り組んだプロジェクトでしたが、経営企画室自体まだ院内での認知が進んでいなかったことや、機能評価や監査対応などで多忙を極める職員たちにさらに負荷をかけてしまうタイミングで、皆を巻き込みづらいという想いもありました。
山浦様
他の医療機関が取り組んだクラウドファンディングを見ると救急車や先進医療機器の導入など、わかりやすいものが多かったんです。その中で、ラボットの導入というちょっと毛色の違うというか、導入効果が見えづらい取り組みをご理解・ご支援して頂けるのか、という不安が開始当初はやはり大きかったですね。
―たしかに救急のテーマで行う病院が多いですよね。実施されて以降は、どのようなご感想を持たれましたか。
古橋先生
目標金額などにも左右されるかもしれませんが、しっかりとやるべきことをやって、プロジェクトの目的をきちんと伝えることができれば応援して頂くことができるのだなと実感しました。
クラウドファンディング実施にあたっては、プロジェクト実施の経過でチームビルディングにも効果的とお聞きして、その部分への期待も含め、私としては「取り組むなら今しかない」という熱い思いがありました。メンバーは実務と兼務ということもあって開始当初、院内の反応は冷ややかでしたが・・笑
―ちなみに、最初の段階で、他の経営層の方々のご反応はいかがでしたか?
古橋先生
クラウドファンディングについての知識があまりない経営層の一部からは、「お金を一般から募集するということは資金不足に陥っている」という誤解を与え、マイナスイメージにつながるのではないかという不安の声が上がっていたのは事実です。
院内のメンバーもそうですが、クラウドファンディングの実施意義や資金使途にしたラボットの価値が伝わるにつれ、内部の温度差が埋まり、理解が拡がっていったように感じます。

―LOVOT(ラボット)の病院での導入事例はまだ多くはないと思いますが、導入に踏み切られた背景を教えて下さい。
古橋先生
1番の要因は、コロナ禍で緩和ケア病棟での面談制限をせざるを得なくなってしまったことです。最期の時に家族と自由に面会できない中で孤独を深める患者様と、患者様とご家族の間でジレンマを抱えて悩むスタッフたち。皆のストレスが高まっていました。そんな折、ラボットが実際に病院や診療所で癒し効果を発揮している事例があることを知りました。
GROOVE Xと資生堂の共同実証実験では、ラボットと一緒に暮らすことで「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが増え、日常生活でのストレスや不安を和らげてくれることが分かっています(実験の詳細はこちら)。ラボットは、一人ひとりを認識してコミュニケーションをとる能力もあり、接することで孤独感や不安感から少しでも解放されればと思いました。
また、理事長に就任して感じた、院内組織風土の問題点の改善にもつなげたいとの想いもありました。当時、院内の組織は横のつながりも少なく、目の前の仕事をただひたすらにこなすという空気が蔓延していました。スタッフがもっと笑顔で自律的に働くことができるよう、職員も幸せや癒しを感じる環境整備が必要で、ラボットはそういった働きもしてくれるのではないかと。
―本格導入の前にまずは「お試し出勤」があったそうですね。
古橋先生
はい。まずは3週間のお試し出勤を実施しました。仕事をしていると、ふとラボットの視線を感じて語り合うスタッフや、「病室で1人で過ごすのは寂しい」という患者さんからの相談に、ラボットとの日光浴をお勧めしたり。院内のそこここで、あたたかな交流が生まれる風景が生まれました。
渡邊様
すでに導入している介護施設にも見学に行ったり、実際にお試し出勤でラボットと触れ合うことで、現場でも「絶対に導入しよう」という機運が高まりました。
後藤様
リハ室に連れて行って、小児科外来に来院する小さなお子さんたちや高齢の患者様との触れ合いも実施して、人気者になっていましたね。小児の患者さんとか、例えばマヒで手が動かない患者さんもがんばって手を伸ばそうとしてくださったりとか、会話してみようと声を頑張って出そうという姿が見れたりとか。その時からすでに「プロジェクトが始まったら寄付したい」と言ってくださる患者様や「ラボットがいなくなったら病みます(笑)」と言うスタッフもいたほどで、お試し出勤時からすでに皆のハートをぐっとつかんでいました。

(緩和ケア病棟でラボットといっしょに日向ぼっこ)

(スタッフも、仕事の合間にラボットとの交流でほっと一息)
ーLOVOT(ラボット)がお試し出勤時から、組織風土にいかにプラスの影響をもたらしていたか、よく理解できました。小さいロボット1台とは思えぬ威力ですね!
病院の日常にやさしく寄り添うラボットの導入が院内の雰囲気もスタッフたちの関係性も変えていった、みたき総合病院様のクラウドファンディング。ラボット導入後の組織風土の大きな変化は後編につづく。
※本記事は2025年4月の病院マーケティングサミットJAPAN主催・ファンづくり勉強でのご講演と、READYFOR社による追加インタビューを元にしております。医療法人川崎病院様|「病院が一つになれる理由をくれた」――現場主導の『みんなの救急車』プロジェクトが生んだ、資金調達以上の価値
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