INTERVIEW

聖隷浜松病院様(後編)|地域とともに、新しい命を支える。――画面越しに届いた、1,600人からの想いと「ありがとう」

聖隷浜松病院

  • 600床〜

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2026/10/22 04:36


老朽化した新生児専用救急車(NBA)の更新を目指し、聖隷浜松病院が挑戦したクラウドファンディング。第一目標である1,500万円をわずか16日間で突破し、最終的には「1,656名 ※代理支援数を含む」「6,209万円」という大きなご支援を集めました。


後編では、支援者から画面越しに届いた1,600件を超える温かいメッセージの奇跡、地域との対話が病院スタッフにもたらした涙と誇りの「インナーブランディング効果」、アワード受賞の喜びについてご紹介します。



目次(後編)

お小遣いからの寄付と、17年前の「ありがとう」。画面越しに届いた1,600件を超える温かい奇跡


――目標を大きく超える支援と共に、胸を熱くするような温かいメッセージが支援者の方々から数多く寄せられました。特に心に残っているものはありますか?


伊田様:すべてのメッセージが、想像を超える温かさに満ちていました。例えば、これからの未来を担う若い世代からの声です。


「学生です。この活動を知り、将来医療に携わる身として、未来の子どもたちのために協力したいと思いました。夏休みのバイト代からなので少しですが、寄付させていただきます。頑張ってください。」


「クラスメイトに新生児救急車の話をしたところ、複数名が協力してくれると言ってくれました。お小遣いから少しずつ出し合い、協力させていただきます。これからも、小さな命を守り続けてください!」


これを見た新生児科の先生や現場のスタッフたちは、「胸が熱くなりました。今日からまた仕事を頑張れます」と、涙ぐみながら語っていました。


また、忘れられない長文のメッセージを寄せてくださったおじい様がいました。2008年5月、お孫さんが産婦人科で生まれた際、急に呼吸障害等の異常が発生し、当院の新生児専用救急車が出動した時の詳細な情景描写です。


「救急車から医師と看護師の方々が急いで分娩室へと移動し、その処置をしている様子をドアの隙間から息をのんで見守っておりました。子猫の首元をつかむようにそっと孫を持ち上げ、『息をしてるわ』と言いながら、生まれたばかりの孫を保育器に入れている医師の姿は今でも昨日の事の様に脳裏に焼き付いています。」


1,800gの未熟児で生まれたそのお孫さんも今年で17歳になり、元気に自転車で高校へ通っているそうです。救急車を見かけるたびにご恩返しをしたいと思われていた中、今回のクラウドファンディングの新聞記事を見て寄付してくださったとのことでした。


このコメントを読んだとき、私たち現役のメンバーは、ある重要なことに気づかされました。この感謝の言葉は、「いま現在当院にいる私たちが提供した医療」に対してではなく、「これまで何十年にもわたってこの病院を支え、命を繋いできた『先人たちの真摯な医療』に対して贈られたものだ」ということです。脈々と受け継がれてきた当院の誇り高き歴史、地域の信頼という尊いレガシーを引き継ぐ、重い責任と誇りを改めて強く自覚した瞬間でした。


いただいた応援コメントは、印刷して病院玄関の「クラファン特設ブース」に掲示


――こうした1,600件を超える支援コメントの1つひとつに対し、オンライン上で個別に返信を行われたそうですね。


伊田様:はい。「ご縁を大切にする」ためにも、いただいたすべての支援コメントに、個別のメッセージで返信することをあらかじめ計画していました。しかし、1,600件を超える件数に対し、それぞれのコメントに合わせた返信を私たちの言葉で打ち返すのは決して簡単な作業ではありません。


実は、ほぼすべての返信を、1人の広報担当者が手作業で対応していました。定型文のコピペではなく、一人ひとりの熱い想いに向き合い、感謝の気持ちを伝えるメッセージをすべて個別で打ち返したのです。


非常に非効率に見える作業かもしれませんが、この泥臭い1対1のやり取りこそが、地域との本当の「対話」を実現した大きな要素だったと感じています。「お礼を返していた」つもりでしたが、メッセージを打っている私たちのほうが、その過程で多くの励ましや勇気をいただいていました。


――その「対話」が、病院内のスタッフにも大きな影響を与えたと。


伊田様:その通りです。集まったメッセージをテキストマイニングで可視化したところ、一番真ん中に大きく「救う」「命」「NICU」「救急車」「お世話になりました」「小さな命」といった言葉が散りばめられていました。


この結果を院内に共有したとき、 「自分たちの普段の仕事が、地域からこれほどまでに求められ、応援されていたなんて思わなかった。本当に誇らしい」 「改めて、自分のやってきたことにやりがいを感じ、覚悟ができた」 という喜びと感動の声が、NICUの隅々まで広がりました。


このクラウドファンディングは、地域に向けた情報発信プロジェクトであると同時に、実は「中にいる職員に自分たちの医療の価値を再確認してもらうプロジェクト」であったのだと、強く実感しています。


震災が起きた当時の様子

※支援者からのコメントは下記からご覧いただけます

https://readyfor.jp/projects/seireihamamatsu-NICU2025/comments


地域と一緒に、新しい命を守る「仲間」に。これからの時代に病院が果たすべき役割


――今回の挑戦を通じて、これからの時代における「病院と地域の関係」についてどのような気づきがありましたか?


伊田様:支援者様のデータを分析してみて、驚くべき発見がありました。


支援者数の約半分は、当院でお産を経験されたり、かつてNICUに赤ちゃんがお世話になったりした患者さんやご家族でした。これは当院をこれまで評価してくださっていた方々からの応援だと確信しています。


一方で、驚くべきことに全体の約4割は、これまで病院と直接的な接点が全くなかった「地域住民、一般の方、SNSやメディアを通じて知ってくれた方」だったのです。


さらに、支援金額の構成比を見ると、また違った大切な側面に気づかされます。

企業・法人の支援者数は、全体のわずか5%に過ぎません。しかし、支援金額ベースで見ると、実に全体の約21%を企業・法人からのご支援が占めていたのです。


これらの分析から学んだのは、企業様には「病院が担う地域インフラとしての理念への共感」を丁寧に説明し、地域住民の皆様には「その裾野を広げる発信」を行う、この2つの車輪が両輪となって動くことが、プロジェクトを成功に導くために極めて重要だということです。


ネット操作が難しい高齢者の方などのために、病院の窓口で直接現金をお預かりして代理で登録する「窓口代理支援(53名)」も含め、可視化された「1,656名の応援団」こそが、私たちが本当に得た財産です。


病院と地域社会が、医療を「提供する側」と「受ける側」という隔たった関係ではなく、一歩進んで「一緒に新しい命を守る仲間」になれたこと。これこそが、当院が得た最大の価値でした。


これからの病院は、ただ一方的に医療を提供する場所に留まるべきではありません。「医療が持つ社会的価値を自ら地域へ能動的に伝え、地域の方々と共にその医療を支え合っていく役割」を、病院が主体となって担う時代になっていくのではないか、と感じています。少子化という厳しい医療環境にあって、今回のクラウドファンディングは、その新しい関係づくりの第一歩、1つの明るい可能性を示すことができた取り組みだったと信じています。


もちろん、クラウドファンディングは実施したことがゴールではありません。新しくなった救急車を使って、地域の赤ちゃんへ安全安心な高度新生児医療を24時間体制で届け続けること、そして今回生まれた温かい繋がりを継続させていくことこそが、本当の目的です。


期間中に投稿した活動報告

車両更新に向けた準備が現在進行中


READYFORのアワード受賞に寄せて


――この一連の取り組みは、READYFOR主催の『CROWDFUNDING IMPACT AWARD 2026』において、優秀賞(地域連動コミュニティ賞)を受賞されましたね。


伊田様:はい。アワードにおいて、高度で専門的な新生児医療というテーマを「地域の課題」として広く共有したこと、そして「新生児専用救急車」を単なる一病院の設備ではなく、「地域を支える社会インフラ」として見事に再定義したアプローチを評価していただきました。


この受賞には、当院の岡俊明院長や、事業団の青木善治理事長も、我がことのように大変喜んでくださいました。この外部からの評価は、チームや病院全体にとって大きな誇りと自信になりました。


――プロジェクトを無事やり遂げた今だからこそ言える、関係者の皆様の「リアルな本音」はありますか?


伊田様:実は、終了後にメンバーと話していると、綺麗事だけではない非常にリアルで清々しい本音もたくさん飛び出しました(笑)。


現場で調整や広報アクションに走り回ったメンバーからは、 「ちょっと大変だったけどね!」 という本音が笑顔でこぼれましたし、経営や資金的な視点からは、 「資金の問題を言えば、本来は自分たちの予算で何とかして購入して、経営を行っていきたいのが本音だよね」 という病院関係者の声もありました。


ですが、そうした苦労やコストをすべて差し引いても、それ以上に代えがたい「組織の団結」や「地域との繋がり」を、READYFORさんの徹底的な伴走によって得られたと確信しています。


クラウドファンディングは、単にお金を集めるだけの仕組みではありません。医療の社会的価値を社会に伝え、地域のみなさまと共に医療そのものを支え合っていくための、血の通った『対話』のプラットフォームです。


「地域で支える新しい命」。この言葉をまさに形にするための私たちの挑戦は、これからも続いていきます。地域の皆さんと共に、未来ある新しい小さな命を、これからも全力で支え続けていきたいと思います。


聖隷浜松病院のプロジェクトメンバーの皆様と、READYFORの担当キュレーターとともに

◾️「READYFORファンドレイジング クラウドファンディングインパクトアワード2026」受賞に寄せて

【地域連動・コミュニティ賞】に選出いただき、ありがとうございました。受賞を聞いた時は、「我々の活動に最もふさわしい賞をいただけた!」と院長はじめ皆で喜びました。

私たちはこのプロジェクトを通じて“新生児医療や新生児専用救急車のことを知ってほしい”と考え活動する中、お寄せくださった多くのご支援と応援コメントが、私たちの大きなモチベーションとなりました。この受賞はまさにご支援くださった皆様、地域の皆様によって成し遂げられたのだと思っております。

当院の新生児専用救急車は、これからも地域の赤ちゃんとご家族の、笑顔と未来を守れるように走り続けます。プロジェクトでのご縁を大切にしつつ、これまで走り続けた救急車とスタッフの想いも乗せて、信頼される医療を提供し続けていきます。
新しい新生児専用救急車が走っている姿を見た時に、「あの救急車はね・・・」と親から子、子から孫へ語られる未来に向かって──。

CFプロジェクトメンバー 一同

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