INTERVIEW
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
600床〜
公益法人
物品購入
設備改修
2024/09/25 03:01

公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院 広報室 室長 稲田 健太 様に、クラウドファンディング導入の経緯や寄付との違いについてお伺いしました。
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
岡山県・病床数1,172床・職員数3,818人
クラウドファンディングプロジェクト
2022年:https://readyfor.jp/projects/kch
資金の使い道:ドクターカー更新など
2023年:https://readyfor.jp/projects/KCH_WALL
資金の使い道:止水壁建設費用の一部
※2024年5月時点
動機
公益財団法人として税法上の税額控除の対象になったことを機に積極的な寄付の受け入れを開始する中、公益性の高い事業に対してクラウドファンディングを通じて寄付を集めることに
成果
自院の取り組みについて多くの市民の方に認知いただけた
応援メッセージがかけがえのない財産となった
ー倉敷中央病院様はどのような特色をお持ちでしょうか?
当院は岡山県に位置する1,172床の広域急性期基幹病院です。創立者・大原孫三郎の「志」を受け継ぎ、最新・最高の医学による最良の医療を志向し、「患者本位の医療」「全人医療」「高度先進医療」を求めて100年間、地域社会に貢献してまいりました。
当院は創立した100年前から「病院らしくない明るい病院」を設計理念に掲げています。経営努力で得た利益で、医療の質を高める努力に加え、患者さんの療養環境、院内設備やアメニティの整備に力を入れています。

(倉敷中央病院様について(ご講演資料より))
ー寄付を始めたきっかけを教えてください
当院は創立者の理念として、従業員に対する心付けなどは、一切断る方針としていました。
ただ、患者さんやご家族の方々からの強いご厚志の要望に、どう対応すべきかと問題提起がありました。検討を重ね、ご厚志があった際の受け入れとして、そのお気持ちを受けとめるための基金制度を設け、2005年から受け入れを開始しました。
ご厚志の使途としては、患者さんの療養環境の整備や、職員への教育研修、当院のボランティア活動など、主に6項目で使わせていただいております。
ー寄付の広報活動はどのように実施されていたのでしょうか?
ご厚志は「希望された際に受け入れるもの」という位置づけでしたので、積極的な寄付の広報活動もしていませんでした。
ただ、2013年に当院が公益財団法人として税法上の税額控除の対象となったことで、目標ができました。寄付者が寄付金控除を申請し税額控除が適用される対象施設となるためには、5年間で平均100件の寄付が必要であり、これまでの寄付広報のやり方では件数が少なく要件を満たせない恐れがあったのです。
そのため2018年から、積極的な寄付広報を開始し、当院の経営の実情を記すなどパンフレットの刷新もしました。
ー寄付の広報発信ではどのような工夫をしていましたか?
倉敷中央病院はお金をたくさん持っている病院だというようなイメージを、市民の方々も持っているのではないかと、疑問が浮かびました。実際、私自身も倉敷中央病院で働く前にそのようなイメージを持っていたのです。
しかし、国の医療費抑制政策や、医療の高度化に伴う薬剤や医療機器の価格高騰、さらに新型コロナウイルス禍も重なり、病院経営は一段と厳しさを増しました。そこで、「民間病院であり、補助金や交付金がほぼないこと」「病院経営が厳しさを増していること」など、当院がどのような状況で運営をしているかが伝わるよう、まわりくどい表現ではなく、直接的な表現を用いるよう、パンフレットの表現も大きく変更し、寄付の必要性を伝えるようにいたしました。
ただ、大々的なポスター掲示などはせず、さりげなくラックに置いておき、気づいた方に手に取っていただくというスタイルにしていました。
2021年に一時的に寄付件数は増加しましたが、その後も継続して、目標の100件以上/年の寄付を確保できるかは不透明な状況でした。
ーそのような状況のなか、どのようなきっかけでクラウドファンディングをスタートさせたのでしょうか?
きっかけは、当院の創立者が設立した「大原美術館」のクラウドファンディングです。
地元の新聞でも取り上げられ、当院の幹部がクラウドファンディングを身近に感じるきっかけになりました。どのようにプロジェクトを実施するのか、私自身、美術館の担当者にヒアリングを行うなどして、2021年より検討がスタートしました。
一クラウドファンディングの検討はどのように進めましたか?
当院では、近年全国各地で頻発する大規模な水害に備えて、高さ1.6メートルの壁を病院周囲に建設する計画を立てていました。総工費は16.5億円となりますが、工事に関して、行政からの補助金はゼロ。すべて自主財源となります。
一方、この止水壁は水害時も医療を継続するという、公益性の高い事業です。「地域の皆さんと一丸となって壁を建設し、水害時も医療を継続して市民の皆さんの健康を守りたい」という思いから、創立100周年を迎える2023年にクラウドファンディングを実施する計画が立ち上がりました。
ただ、クラウドファンディングのノウハウがなく目標金額の設定も分からない状態で実施するのは不安がありました。
その際出たアイディアが、ドクターカーの更新です。地域の心疾患患者さんを救うため、17年間で34万㎞を走行した車両ですが、公益性が高い取り組みにもかかわらず、予算の優先順位などの関係もあって、更新ができてない状態だったのです。このような中、2022年にドクターカーの更新、2023年に止水壁建設、という流れでクラウドファンディングを実施することとなりました。

ー寄付とクラウドファンディングでどのような成果が得られましたか?
当院は第6次中期経営計画のテーマを実現するための戦略を4つ掲げています。私見とはなりますが、寄付は、4つの戦略のうち「病院スタッフにとって魅力ある職場」と「地域とともに歩み続け、事業をサステナブルなものへ」に繋がるものではないかと考えています。
寄付はお金だけではなく、患者さんからのメッセージという、かけがえのない宝物をいただくことができます。
ー寄付者の方からどのようなメッセージが寄せられていますか?
通常の寄付の申込書では、寄付の理由を記載される方もいらっしゃり、日常診療やコロナ禍における入院受け入れ等への感謝の言葉とともに、ご寄付を頂戴しています。
またクラウドファンディングでは、当院に期待と信頼を寄せていただいているということが伝わる応援メッセージをいただきました。
中には「寄付を通じて帰属意識が生まれ、より地域やその医療環境などを考えるきっかけになる取り組みだと思いました」というメッセージもいただくことができました。
応援メッセージがすぐに確認できるように院内のイントラネットでも職員向けに随時発信しまして、2つのプロジェクトで延べ28,000回以上表示されています。当院の職員一人あたりに換算すると、一人7回は応援メッセージを見たという計算になります。
ーメッセージへの職員の皆様の受け止めは、いかがでしょうか?
毎年、院内で実施している「職員満足度調査アンケート」の自由記載欄に記入されていた職員のコメントでは、
「地域の方にとても支持されていることが分かり、誇りに思う」
「期待に応えられるよう努力したい」
「応援メッセージを読み、目頭が熱くなった。明日からもがんばろうという気持ちになった」
といったコメントがあり、まさに「モチベーションの向上」や「魅力ある職場」を感じられる一助となっていると感じています。

ー通常の寄付とクラウドファンディングには、どんな違いがありましたか?
通常の寄付は、入院患者さん全員に配るパンフレットで「謝礼のお断り」に関連して紹介しています。また、誤解を招かないように、入院予定や入院中の患者さん・ご家族の方々からのご寄付はご遠慮いただいています。広報発信については、病棟での掲示や外来のラックでのパンフレット設置、受付の看板に記載するなどを行っています。
目標金額も定めませんし、大々的な広報はしていませんが、患者さんが当院の診療を通じて抱いていただいたお気持ちを受け取ることができます。
一方、クラウドファンディングは、目標金額に応じた使途が決まっており、さらに、当院の公益性の高い取り組みを多くの方に知っていただくという目的がありますので、多面的な広報を展開しています。具体的には、「プロジェクト開始当日の記者会見」「玄関に大きな看板を設置」「SNSでの積極投稿」など、多くの方々の目に留まるような、様々な広報施策を展開しました。
もう1つの特徴として、クラウドファンディングは、通常の寄付と比べて他県からの寄付の割合が多いということが分かっています。県内だけではなく、広く県外の、より多くの方々に、当院が取り組む公益性の高い事業を知っていただく。そのうえで、抱いていただいたお気持ちを受け取ることができる取り組みです。
これからも、どちらも大切に運営していきたいと考えております。
ークラウドファンディングを実施して、どのような気付きがありましたか?
READYFORの担当者の方から、「寄付者には7回御礼を伝えましょう」というアドバイスがありました。「7回お礼をするとはどういうことか?」と思ったのですが、募集期間中、そして終了後にも、活動報告などあらゆる接点で、感謝、そして報告をすることが重要、ということでした。クラウドファンディングでは、感謝状の送付、広報誌などでのお名前掲載などの返礼を通して、感謝を伝える機会がありました。
通常の寄付においても寄付者との接点が取れているか振り返ったところ、不十分だったと気がつきました。そのため、通常の寄付で一定の金額をご寄付いただいた方々にも、クラウドファンディングと同じスタイルで感謝状をお送りするようにしました。
また院内に設置している寄付者のお名前を掲示する銘板に関しても、同じルールで運用することにしました。


(寄付者様のお名前を掲載している銘板(ご講演資料より))
それぞれの枠に該当するクラウドファンディングの寄付者のお名前を展示しておりましたが、そこで通常の寄付を頂いた方のお名前もご紹介するようにしました。倉敷市の竹材を加工した木目調の銘板に、お名前を掲載しています。銘板は、寄付金の受付窓口の近くに設置しております。ご覧になられる方の中には、「ここに名前が載るにはどうしたらいいの」というようなお声がけをいただくこともあります。
ー寄付者の方に関わることで、そのほかに実施されていることはございますか?
ご寄付いただいた方々の想いも広報できないかということを検討しています。例えば、クラウドファンディングの返礼で、インタビューをご希望いただいた方の想いを広報紙に掲載するなどです。
寄付者の方々は、設立当初からご家族で代々、当院にかかられているという方や、入院治療中の看護師の指導が生活習慣を変えてくれたという方、また、禁煙により節約できたタバコ代を当院に寄付しました、という方など様々な方がいらっしゃいました。
寄付者の方々の想いを広く紹介し、さらに「ご寄付をどのように活用させていただいたか」をより積極的に広報していきたいです。寄付者との接点を増やせるよう、パンフレットの充実や、現在の簡素なウェブページだけではなくて、より充実したウェブページを今後、制作ができれば……と、検討を進めております。

(患者さんの想いを広報誌に掲載(ご講演資料より))
ー今後クラウドファンディングをどのように活用していきたいと思いますか?
これまでのクラウドファンディングはトップダウンで取り組んでいましたが、現在はボトムアップの職員公募型のクラウドファンディングに挑戦しています。
今後、継続した資金調達を目的に、職員からの公募によるテーマで、クラウドファンディングの実施を検討しています。採択するプロジェクトテーマとしては「公益性の高さ」に重きを置いています。
ークラウドファンディングにどのような効果を期待されていますか?
クラウドファンディングは、当院の「公共性」「社会貢献的な事業」を広報する1つの機会になっています。当院の取り組みを多くの方に知っていただき、さらには「魅力ある職場」ということも発信し続けていける手段の1つなのではないでしょうか。
公益性の高い事業を、継続して取り組み続けられる様、今後も活用してまいりたいと考えております。
※本記事は2024年5月にREADYFOR主催した「みらい病院シンポジウムvol.2 不確実時代をどう生き抜くか?病院経営の在り方、徹底解剖」でのご講演を元にしております。倉敷中央病院様のご講演アーカイブはこちら
https://cfevent.readyfor.jp/medical/230602/archives
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