INTERVIEW

大雄会第一病院様|放射線技師から“病院経営の舵取り役”へ。機能転換のタイミングで、クラウドファンディングに取り組んだ理由とは?

社会医療法人大雄会 大雄会第一病院

  • 〜199床

  • 物品購入

  • 民間

2025/04/09 04:30

社会医療法人大雄会 医療技術部 局長 兼 大雄会第一病院 事務長の日比野友也様にクラウドファンディング実施の経緯やその後の反響を伺いました。

社会医療法人大雄会 大雄会第一病院


  • 愛知県・病床数132床・職員数287人

クラウドファンディングプロジェクト


  • 続く挑戦、未来をつむぐ。患者様送迎サービス用の車両購入へご支援を!

  • 資金の使い道:送迎車両の増車

  • 動機:急性期から亜急性期に機能転換するにあたり、地域住民や医療機関に対して機能転換を周知する広報戦略として効果的だと考えたため。

  • 成果:機能転換や自院の思いを地域の皆様にご理解いただくことができ、またプロジェクトをやり遂げたことにより院内職員の一体感や達成感を高められた

目次

25年続けた診療放射線技師から“病院の舵取り役”事務長への転身

ー 日比野様は、大雄会第一病院で長らく診療放射線技師としてご勤務されたのち、事務長に就任されたと伺いました。事務長就任の経緯を教えていただけますか?

新卒で当院に入職して以降、診療放射線技師一筋で、25年ほど働いていました。その後、事務長になったのは、ひとことで言えば、理事長からの指名です。事務長になる数年前から、理事長に「ビジネススクール行ったらどう?」「経営の勉強してみない?」などと持ちかけられていました。ただ、当時私は放射線技師として現場と向き合っていて、診療放射線技術の博士号取得のために金沢大学に通い始めたばかりのタイミングだったので、まさか実際に自分が事務長になるとは想定していませんでした。

― そのような中、経営を学ぶ決心をされたのですね。

畑違いの分野ではあるけれど「勉強になるかもしれない」と思ったからですね。金沢大学で学位を取得後にグロービス経営大学院に入りました。

ビジネススクールに通い始めて半年ぐらい経ったあたりで、理事長から具体的に話を持ち掛けられ、最終的には2019年に正式に事務長になりました


事務長1年目はコロナ禍のど真ん中でのスタート

ー事務長就任後、初年度からコロナ禍という大変な時期であったかと思います。どのような状況だったのでしょうか。

激動の1年目でしたね。当法人は社会医療法人で同グループの総合大雄会病院は地域医療支援病院でもあるので、コロナ患者の受け入れを決めましたが、対応が難しいことも多かったです。

当院(大雄会第一病院)も地域の透析医療の中核的な病院であるため、透析が必要なコロナ患者の受け入れを行ったのですが、人工透析というのは1回あたり約4時間かかります。その間、医師・看護師・臨床工学技士全員がPPE(感染防護具)を着て、個室で対応する必要がある。しかも透析患者さんは高齢で糖尿病など合併症を伴っている潜在的にハイリスクの患者さんが多く、対応がとても大変でした。

ー コロナ禍を経て、病院経営に変化はありましたか?

一番大きかったのは、一部の患者さんが「病院に行かなくても支障がない」と思い始めたことですね。重篤な患者さんの数はそれほど変わりませんでしたが、軽症の方の来院控えが増加したことで経営的には厳しい状況になり、オンライン診療への対応や、患者さんとのコミュニケーション方法のアップデートなど、「やり方」を変えざるを得ませんでした

また、当院のある医療圏は急性期病床数が過剰な一方、回復期病床はかなり不足している状況です。少子高齢化や2025年問題への対応のため、急性期から回復期の機能を持つ亜急性期医療を提供するケアミックス病院へと機能転換する決断をしたのも当院にとって大きな変化でした

機能転換のタイミングだからこその、クラウドファンディングへの挑戦

ーそのような中、クラウドファンディングに挑戦しようと思われたきっかけは何だったのですか?

きっかけとして大きかったのは、病院として「変わる時期」にあったことです。 クラウドファンディングは、資金調達というより、むしろ地域住民や医療機関に対して当院の機能転換を周知するための広報戦略として効果的ではないかと考えていました。

また、機能転換のタイミングで、チーム一丸となって取り組むことのできる施策を探していて、クラウドファンディングにその可能性を感じたのも、挑戦を決断した理由の一つです。

機能転換に伴って、当法人から地域の高齢者施設や在宅医療を担っている医療機関にお迎えにあがり、お送りする送迎サービスの増強をしたいとも考えて、患者様送迎サービス用の車両購入をテーマにしました。

(大雄会第一病院様のクラウドファンディングプロジェクト)

大雄会第一病院様のクラウドファンディングプロジェクト

自分事として捉えてもらうため、相手によって伝えるメッセージを工夫

ーどのようなチーム体制でクラウドファンディングを進めましたか?

リーダーは事務長である私が務めましたが、現場の第一線にいる看護師にはぜひプロジェクトメンバーに加わってほしいと思い、看護部長にも協力を仰ぎました。他部門のスタッフも巻き込み、特に事務長補佐や広報課、財務課のスタッフには尽力してもらい、主要メンバーは5名となり、さらに院内の協力メンバーとして数十人の職員が加わる形で進めていきました。

ークラウドファンディングを進める中で、院内の職員の皆さんからはどのような反応があったのでしょうか。

職員からは色々な意見も上がりましたが、基本的には前向きな反応が多かったですね。職員に伝わるよう、院内のイントラネットで発信したり、各病棟にクラウドファンディングの達成率を数字で掲示するなどして、少しずつ理解を広げていきました。

同じ法人の他病院などでは「知ってはいるけど、どこか他人事」という微妙な距離感がありましたが、同法人の総合病院や大雄会クリニックでもポスター掲示をさせてもらうなど、クラウドファンディングの広報は行っていました。

(大雄会第一病院内での院内掲示)

大雄会第一病院内での院内掲示

ーご支援依頼ではどのような工夫をされていましたか?

この取り組みを「自分事」と捉えていただけるよう、相手によって打ち出すメッセージの内容を変えていました

たとえば、地元の企業やロータリークラブなどへの呼びかけでは、地域医療が高齢化により厳しくなっている現状をしっかり伝えました。「セーフティーネットである地域医療を守るために力を貸してほしい」と言った形でお話しすると、企業さんも応援くださることが多かったですね。

ー地域住民の方々へのメッセージは、どのように設計されたのですか?

創立100年の年でしたので、「100年間この地域で医業をさせていただいたご恩返し、そして今後も地域の医療を守るために舵を切りたい」とお伝えしたところ、多くの応援をいただくことができました。

ーそのほか、高齢者施設の職員さんや金融機関への発信の際には、どの様な工夫をされていたのですか?

人手不足が深刻化している高齢者施設に対しては「大雄会として、職員の皆さんの負担を少しでも軽減できるような支援をしたい」というメッセージを訴求しました。今回の送迎車両の導入は、施設全体の業務効率化や患者さんの負担軽減にもつながるので、そういった具体的なメリットも含めて説明しました。

金融機関に対しては、支援依頼というよりは「私たちがどう成長していく病院を目指しているのか」を伝え、資金繰りが苦しいからクラウドファンディングをするという誤解を招かないよう、しっかり説明しました。

(クラウドファンディングの支援を呼びかけるチラシ)

(クラウドファンディングの支援を呼びかけるチラシ)

ー 対外的な広報活動では、どのような点に力を入れられましたか?

頼りがいのある広報課のメンバーが、プレスリリース配信や今までの繋がりなども活かして、新聞やラジオなどの地元メディアで発信する機会を作ってくれました。

(東海ラジオに出演される日比野様)

クラウドファンディングは病院経営に対する通知表

ー 1,400万円を超えるご支援が集まりましたが、どう捉えていらっしゃいますか?

法人全体の医業収入を考えると、額自体は大きいものではありません。ただ、このクラウドファンディングは金額以上の意義があったと感じています。

例えば、テレビや新聞といったメディアに取り上げられるためには、通常かなりの広告予算が必要で手配も大変です。が、今回クラウドファンディングに取り組んだことで、メディアの側が、我々の取り組みに関心を持ち、取り上げてくれました。ある新聞に見開きで掲載された翌日には、新聞記事をご覧になった方からお電話を頂くなど、効果もインパクトも大きかったと感じます。

そして一番の発見は、「病院のファンって、意外といるんだな」ということです。地域の方々から寄付をいただくことで、「自分たちは思っている以上に地域の皆さんに期待されているんだ」と気づくことができました。寄付者の方々の想いに触れ、大きな感動を得るとともに、寄付をお願いするには勇気がいるということ、寄付というのはこんな風に集まるんだということも今回初めて知りました。

ー このクラウドファンディングでどのような成果が得られましたか?

成果として大きかったのは「当院が担う役割が変わること」を地域に周知できたことです。「病院の機能分化がどう進んでいるのか」「皆さんのご支援がどう地域に役立つのか」ということを広く伝えることができて、病院と地域の新しいつながりの形を築けたと思っています。

また「一つのチームで目標に向かい、やりきる」という経験と達成感が、職員間のまとまりや高い意識の醸成にも繋がりました。

ー今後、クラウドファンディングで繋がった方々と、どんな関係性を築いていきたいとお考えですか?

高額寄付も多数頂き、本当に感謝しております。ご支援くださった患者様には、引き続き当院を選んでいただけるよう、より高い医療サービスを提供できるよう努めていきます。地元企業、施設の皆様とは連携を強化していきたく思っております。

また、支援者の皆様とのつながりを大切にし、寄付によって生まれた変化を実感していただけるよう、イベントやニュースレターなどを通じた情報発信にも力を入れていきたいと考えています。今後も皆様とともに地域医療を支えていけるよう、引き続きご意見やご協力をいただければ幸いです。

ー日比野様のキャリアから病院経営視点でのクラウドファンディングまで、興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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