INTERVIEW
国立大学法人 旭川医科大学
600床〜
大学
物品購入
2025/08/27 05:00

国立大学法人 旭川医科大学
北海道・病床数約600・職員数約1,500名
クラウドファンディングプロジェクト
資金の使い道:造血幹細胞の凍結保存容器の購入
動機:資金調達とあわせて、血液内科の活動を学内にアピールする機会になると考えたから
成果:目標金額を越える寄付が集まり機材購入の目処が立つと共に、応援の声や新たな繋がりなどの副産物も得られた
目次
ーまずはご自身と、旭川医科大学様の紹介をお願いします。
旭川医科大学内科学講座血液内科学分野の高橋秀一郎と申します。旭川医科大学は北海道旭川市にある大学病院で、北海道北部の道北・オホーツクエリアという、四国4県とほぼ同じぐらいの広大な医療圏をカバーしていることが特徴です。
特に、血液内科医は旭川に集中しているため、2〜3時間かけて受診される患者様も少なくありません。近年、血液疾患の患者数は増加しており、様々な問題の中で医療を支えていかなければならない状況です。

(血液内科の皆さん)
ー今回のクラウドファンディングの資金使途である「細胞凍結保存容器」とはどのようなものなのでしょうか?
急性骨髄性白血病の治療成績は、同種造血幹細胞移植の進化により近年向上しています。この治療では、健常ドナーから採取した細胞を液体窒素で凍結保存し、患者の状態が整い次第移植することで、ドナーの免疫の力を借りて白血病細胞を破壊します。また最先端のCAR-T細胞療法においても同様に細胞を凍結保存する必要があり、血液疾患治療において細胞凍結保存容器は極めて重要な医療機器といえます。
私が赴任した2024年当時、既に当院が所有する既存の保存容器1台では容量が逼迫しており、治療のさらなる発展のためには早急な追加購入が必要な状況でした。しかし、機器の値上がりや円安、人件費高騰などの影響もある中、病院の予算で高額な医療機器をすぐに購入できる状況ではないことが分かり、本当に途方に暮れていました。

(現在、実際に使用している凍結保存容器)
ーそこで取り組んだのが「クラウドファンディング」だったのですね?
はい。「どうしたらこの機器が買えるだろうか…」と思案していたところ、学内のクラウドファンディングの企画公募の案内が届き、これはチャンスだと思いました。細胞凍結保存容器の購入資金を獲得するためには、クラウドファンディングで資金を募るしかないと思い、すぐに参加させていただきました。
また同時に、クラウドファンディングを通して血液内科の活動を学内にアピールできることにも魅力を感じ、頑張ってみようと考えました。
ープロジェクトには、どのような体制で取り組まれたのでしょうか?
学内公募によるクラウドファンディングは大学として初めての取り組みだったこともあり、本当にコンパクトなチームだったと思います。血液内科から統括として私が立ち、企画やウェブページの作成などに数名、広報などの作業に数名、加えて、大学の広報のスタッフが数名という形です。そこに、伴走者としてREADYFORのキュレーターの方々に加わっていただきました。
ー開始までの期間は、どのような準備をされたのでしょうか?
学内審査を経て、クラウドファンディング開始の約3ヶ月前からクラウドファンディングの準備を開始しました。
一番重要で難しかったのは目標金額の決定でした。私のプロジェクトは、All or Nothingという「目標額に到達しなければ全額返金」という形式でしたので、目標額の設定は非常に頭を悩ませました。READYFORの方々にアドバイスをいただき、ウェブページやチラシなどの広報素材の作成、「どういった方に寄付を募ることができるか」という広報先の検討などを進めていく中で、あわせて目標金額も決まっていきました。

(旭川医科大学クラウドファンディングページ)
ー開始してからはどのように寄付の呼びかけをされたのでしょうか?
まず軸となったのが、賛同してくださる可能性の高い、同僚、元同僚、同業者、患者様とその家族など、親しい方々への寄付のお願いでした。お陰様でクラウドファンディング開始直後から続々と寄付をいただき、約10日で目標金額の50%到達と、滑り出しは非常に良かったと思います。
次に、大勢に一斉にアプローチできる手段として、大学同門会や研究グループのメーリングリストなどに配信させていただきました。また新聞やラジオ、テレビといったマスメディアに掲載いただいたことも非常に有効でした。
その他、つながりのある企業への大口寄付のお願いや、患者会のウェブサイトへの掲載、SNSの活用、学内掲示板へのチラシ掲示や、関連病院や科学イベントでのチラシ配布など…。とにかく思いつくことは全てやりました。繋がりの強い方からの寄付だけでなく、大人数への呼びかけがうまく噛み合うと、寄付が少しずつ積み上がり、支援の輪が広がっていく実感がありました。

(知り合いの医療系YouTuberの先生の動画に出演した様子。)
ー改めて、挑戦を終えられてのご感想をお聞かせください。
おかげさまで、ネクストゴールとして掲げた750万円も無事に達成することができました。現在、凍結保存容器の購入に向けて具体的な手続きを進めており、今年の9月頃には納品予定です。
寄付いただいた方の内訳を見ると、医療関係者以外からの寄付が約65%という結果でした。当初の想定を上回る形で一般の市民の方からも寄付をいただいたということは、本当に財産だと思います。北海道外の方からの寄付が4割を占めていたことも、広報活動の成果を感じる嬉しい結果でした。また、寄付者の皆様からいただいた応援コメントは本当にプライスレスなものだと感じています。
初めての試みだったので、正直、終了までは不安な日々が続きました。最初は手探りではありましたが、広報活動を続けるうちに少しずつ反応があって、寄付や応援のコメントが積み上がっていくことがチーム全体のモチベーションに繋がり、私自身の不安も解消されていきました。とにかく活動を続けて、頑張ってみることが重要なのかなと思います。

(イベント会場の一角に設置した紹介ブースにて、プロジェクトの説明をする高橋先生。)
ー今回、初の学内公募によるクラウドファンディングということでしたが、学内の連携で印象的だったことはありますか?
学内公募によるクラウドファンディングの第一号ということで、プレッシャーもありましたが、同時期に複数のプロジェクトが進んでいたため、お互い支え合うことができたのは良い点でした。
大学の広報のスタッフとは密にコミュニケーションを取り、主に学内外への情報発信の面でサポートをいただきました。大学公認でやっているということはアピールになりますし、学内の機運を高めることにも繋がり、非常に心強く感じました。
正直、初めてのことだったので、プロジェクトに関わるメンバー全員が100%最初から協力的だったかというとそうでもないのですが、実際に寄付が積み上がっていくと、だんだん皆自然とモチベーションも高くなって、主体的に行動してくれるようになりました。まずは誰かがリーダーシップを取ってどんどんやる必要があると強く感じました。

(活動報告ページより)
ーこれからクラウドファンディングに挑戦される方へのアドバイスがあればぜひお願いします。
プロジェクトを成功させるためには、企画者の主体的な取り組みが不可欠です。READYFORの伴走があるからこそ挑戦が力強く進められる一方で、やはり企画者自身の立案や実行が成功の鍵を握るということを、強調させていただきます。
クラウドファンディングの挑戦を通して、新たな繋がりができたり、患者様や地域の方の声を聞くことができたりと、寄付だけではないさまざまな副産物が得られました。私自身も通常の仕事では得られない新たな学びがあり、非常に勉強になりました。
クラウドファンディングの検討をされている皆様は、ぜひ一度チャレンジしてみることをお勧めします。
本記事は2025年7月にREADYFORが共催した【大学病院×クラウドファンディングセミナーvol.1 地域と共創する:大学病院の在り方~学長講演 & 成功事例から学ぶ『共感』を生む地域への『広報』~】でのご講演を元にしております。
セミナーのアーカイブ動画はこちらからご視聴いただけます。
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