INTERVIEW
筑波海軍航空隊記念館・鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)様|複数プロジェクトの実践で見えたミュージアム x クラウドファンディングの可能性とは
プロジェクト茨城「筑波×鹿島」海軍航空隊跡地の指定管理者 金澤大介
2025/10/27

今回は、指定管理者として複数のクラウドファンディングに携わってきた、プロジェクト茨城代表の金澤様にお話を伺いました。複数プロジェクトの実践で見えたミュージアム x クラウドファンディングの可能性とは?実体験をもとに、資金調達の取り組みによってうまれた人とのつながりと、収集・保存活動との相互作用・可能性について紐解きます。
プロフィール
筑波海軍航空隊記念館・鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)
金澤 大介 様
1970年生まれ、水戸市出身。株式会社プロジェクト茨城 代表、特定非営利活動法人いばらきの魅力を伝える会 代表理事。上記施設に加え、笠間市地域交流センターともべ「トモア」、伊東豊雄作品 笠間の家、かさま歴史交流館 井筒屋、笠間市立 歴史民俗資料館、地域交流館みほふれ愛プラザの施設管理に携わる。また、いばらきフィルムコミッションの他、大子町・日立市・笠間市・桜川市・美浦村のフィルムコミッションに携わる。
目次
── 金澤様が初めてクラウドファンディングに挑戦されたのは2020年でしたね。
はい、茨城県笠間市の筑波海軍航空隊記念館を立ち上げる際にクラウドファンディングを実施しました。
筑波海軍航空隊の敷地は、数多くの戦跡が当時のまま残る、国内最大級の戦争遺構でした。ほとんどの建物が取り壊される予定でしたが、映画のロケ地として注目を集めたことや、貴重な戦争史跡を保存・活用すべきだという声が多く寄せられたことから、2018年に笠間市の公営ミュージアムになることが決まりました。
同時に笠間市の文化財指定を受けることも決まり、ありがたい一方で、文化財指定後は改修や改築が自由にできなくなるという制約もありました。90年以上前の建物は、自動ドアが壊れ、エアコンの室外機も放置されているような状態で、ミュージアムとして一般公開できる状態ではありませんでした。そこで改修費用を集めるために挑戦したのがクラウドファンディングでした。(クラウドファンディングページはこちら)

(筑波海軍航空隊記念館のクラウドファンディングページより)
── 結果として目標金額を超える1,567万円という大きなご支援が集まりました。どのような方からご支援をいただいたのでしょうか?
遺族の方などを中心に、施設の保存を願う方々から多くのご支援をいただきました。チラシやポスターを作り、関連する団体に配布していただいたり、施設に掲示していただいたりと、アナログな方法での呼びかけにもかなり力を入れました。
2013年から映画とのタイアップで一部施設を一般公開していたため、記念館の立ち上げ前から施設の存在を知ってくださっている方が何十万人といらっしゃったことも大きかったです。映画のロケ地として訪れたことがきっかけで支援してくださった方も、たくさんいらっしゃいましたね。

(クラウドファンディング期間中、講演会にて活動紹介をする金澤様)
── 実際に挑戦されて、資金調達以外に感じられた成果はありましたか?
正直に言うとクラウドファンディング挑戦を決めた当初は、資金調達だけが目的だと考えていました。でも結果的には、それ以外にもさまざまな成果が得られることを実感しました。
1つ目は「発信力」です。行政からの補助金などと違い、一種のイベントのような形でクラウドファンディングが立ち上がることで、多くの方に知っていただく機会になります。「今しかないチャンス」といったストーリーが話題になりやすく、私たちの場合、多くのメディアに取り上げていただくことにも繋がりました。
そして2つ目は「実績」です。「これだけ多くの人が注目し、支援している」という目に見える成果は、行政や議会を動かす大きなインパクトになります。今も行政と協力しながら様々な活動が展開できているのは、クラウドファンディングによる影響が大きかったと感じています。
3つ目は「コミュニティ形成」、これが一番大きな成果でした。自分たちと同じ想いを持つ方々と繋がり、今でも連絡を取り合えるコミュニティができたこと、今後の取組を楽しみにしてくれる仲間たちとの出会いが生まれたことは、何よりの財産だと思っています。

(活動報告より)
── その後2022年に、再びクラウドファンディングに挑戦されていますね。
はい、茨城県美浦村にある鹿島海軍航空隊跡のプロジェクトです。
ここには巨大な戦争遺構が残っていましたが、敷地の半分は既にメガソーラーになってしまい、もう半分も取り壊して公園にする計画になっていました。そこで私たちは期間限定で施設をお借りし、その期間中に景観を後世へ繋げるための足がかりを作ろうと考えました。
行政としてもこの場所をどうするべきか決めかねていた状況で、「残すべきだという声が多く集まるようであれば、遺構を残すことも検討する」と言っていただいていました。
そこで挑戦したのがクラウドファンディングでした。資金調達はもちろん、支援者の数や声を集めて「民意」を示すという目的もあり、まさに先ほどの3つの成果のうちの「実績」に期待をして挑戦したクラウドファンディングでした。(クラウドファンディングページはこちら)

(鹿島海軍航空隊跡のクラウドファンディングページより)
── ここでもやはり、3つの成果があったのですね。
お陰様で多くの方にご支援をいただき、施設の整備と一般公開を実現することができました。筑波海軍航空隊記念館のプロジェクトに支援してくださった方が、鹿島海軍航空隊跡のプロジェクトにも支援してくださる、というケースも多く、まさに「支援者コミュニティの力」を感じました。
もちろん支援者の皆さんとは、それまでの人間関係や、関連団体とのつながりを重視しながら、コミュニケーションをとるように心がけてきました。

(鹿島海軍航空隊跡 一般公開前の内覧会の様子)
その後、 笠間焼発祥の地である「久野陶園」の登り窯を保存するためのプロジェクトや、茨城県近代美術館にて水戸出身の画家「中村彝」の魅力を伝えるためのプロジェクトなど、茨城県内のクラウドファンディングにいくつか関わらせていただきました。
やはりここでも、前のプロジェクトの支援者様が支援してくださる、といったことに助けられ、「支援者コミュニティの力」を実感しました。
── 直近で挑戦されたのが、昨年、2024年のプロジェクトでしたね。
はい、戦争資料のデジタルアーカイブスを構築するためにクラウドファンディングを実施しました。これは、「このままでは戦争の記憶の継承が途絶えてしまう」という危機感からスタートしたプロジェクトです。
私たちが扱う戦史・戦跡の分野は、アートの世界とは異なるさまざまな課題を抱えています。明確な鑑定基準などがないことや、ミュージアム間の連携が進んでいないこと。また中核でもある「遺品」は、それを大切に想うご家族がいなくなることで次々と散逸してしまいますし、神社等に収められたものは研究対象にするのは難しいという課題もあります。
今後、地方のミュージアムが入館料だけで経営を成り立たせるのが難しくなっていく中、ますます企画や研究にコストや人員を割けない状況になっていくと考えられます。そこで戦争資料を横につなぐような仕組みが必要だと考え、立ち上げたのがこのプロジェクトでした。
この仕組みを構築する上で私たちは、賛同してくださる方に支援いただくスタイルを確立しなければ、デジタルアーカイブスの継続は難しいと考えていました。そこで、ミュージアムの運営や資料の継承に賛同してくださる方々を集めるため、クラウドファンディングを活用することにしました。(プロジェクトページはこちら)

(デジタルアーカイブス構築プロジェクトのクラウドファンディングページより)
── クラウドファンディングで集めた資金によって、早速デジタルアーカイブスの運用が始まっていますね。今後はどのような展開になるのでしょうか?
今回、まずは自分たちの施設が所有する資料をデジタル化し、発信するための土台をつくることができました。
今後は、同じように戦争資料のデジタル化に取り組まれている方々との連携をどう作っていくか、がチャレンジだと思っています。「どこの施設が何を所蔵しているのか」を互いに共有しあうことが、ミュージアム同士の協働のための下地になると考えています。

(公開中のデジタルアーカイブスサイトより)
── クラウドファンディングの挑戦が、ミュージアムの収集・保存活動にもたらした効果はありましたか?
筑波海軍航空隊記念館も、鹿島海軍航空隊跡も、戦争にまつわる様々な資料を所有していますが、クラウドファンディングの挑戦がなければ、こうした状況にはなっていなかったと思います。
実は、クラウドファンディングをきっかけに施設やデジタルアーカイブスの取り組みをを知ってくださった方から、「遺品をどこかに残したいと思っても引き取り先がない」と、寄贈のご相談をいただくことが増えました。
自分たちだけで運営をおこなっていたら、こうした方々との出会いは生まれなかったと思うと、このご゚縁が何よりの成果だと感じています。

(収集された資料)
── 素晴らしいですね。コレクションとの出会いや企画に悩むミュージアムにとっても、クラウドファンディングは効果的だと思われますか?
クラウドファンディングは、ミュージアムが明確に自分たちのビジョンやメッセージを発信する機会にもなる、という点で効果的だと思います。
これまでのクラウドファンディングでは「この作家の作品を残していきたい」「ミュージアムとしてこういう方向に向かっていきたい」というメッセージを発信したことが、企画展を開けるくらい幅広い資料の寄贈のご連絡をいただくことにもつながりました。
また、外向けにメッセージを発信することは、日々の運営に携わる施設職員が、自分たちの目指す未来や現在地を再認識することにもつながると思います。
例えば筑波海軍航空隊記念館のクラウドファンディングに挑戦した時は、まずは史跡を残すこと、そして次は周辺の戦跡の実態調査を、その次は一般公開を…とロードマップを描けたことで、今何を最優先でやるべきなのかが明確になり、不安にならずに目の前の活動に取り組むことにも繋がりました。
── 最後に、クラウドファンディングの実施を検討している方々へメッセージをお願いします。
さまざまな資金調達の方法がある中で、どんなケースでもクラウドファンディングが良いかというと、もちろんそうではないとは思います。
私たちも、年間の活動資金をいただくという名目で友の会制度を運用したり、行政や国の補助事業に採択いただいて活動をしたり、映画などのロケーション撮影の受け入れによる事業収入があったりと、複数の収入源を活用しながら活動を行ってきました。
ただ、もしミュージアムの目指す未来の目標を実現するために、今日お話しした「発信力」や「実績」、そして「コミュニティ」が必要だと感じた時には、クラウドファンディングは非常に有効な手段になると思います。検討しているのであれば、ぜひ一度チャレンジしてみることをおすすめします。

(鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園))
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※本記事は、2025年9月に開催された『トークシリーズ 【資金調達の視点からよみとく 美術館の今とこれから】 vol.3 コレクションを次世代へ繋ぐために ―収集・保存活動と資金調達の実践から見えた可能性―』の内容をもとに作成しました。
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