INTERVIEW
野外民族博物館リトルワールド様|チームで取り組んだ情報発信、得られた支援者とのつながり
野外民族博物館リトルワールド
2025/09/22

クラウドファンディングプロジェクト詳細
リトルワールド「ネパール 仏教寺院」の危機、修復し未来へつなぎたい
期間:2023年10月3日〜2023年11月30日
達成金額:10,155,000円(目標金額5,000,000円)
資金使途:屋外展示家屋(ネパール仏教寺院)の躯体外装全面修復
成果:応援してくれる方々の存在を再認識、新しい方々とのご縁が地域の内外で生まれた
目次
──まずは簡単に自己紹介をお願いいたします。
野外民族博物館リトルワールドで主任学芸員を務めております、宮里孝生と申します。これまで世界各地で様々な調査を行ってきた経験もありますが、最近は展示家屋の修復・保存にも注力しています。

(野外民族博物館リトルワールド 主任学芸員 宮里孝生様にお話を伺いました)
野外民族博物館リトルワールドは1983年の開館以来、世界の様々な民族の文化や暮らしぶりを紹介することを通して、楽しみながら異文化理解や国際理解を深める場作りをしてきました。
特に野外展示家屋はすべて世界各地の家屋標本として「本物」の価値をもっており、例えば今回の修復対象であるネパールの仏教寺院は、入念な実地調査をした上で、大工や仏画師などの専門職人を現地から日本に招聘し、伝統技術を用いて建造した建物です。
──クラウドファンディング実施の背景にはどんな課題があったのでしょうか?
開館から40数年、当館が有する様々な展示家屋も老朽化が進み、傷んでは修繕をする工程を繰り返してきました。
今回の修復対象であるネパール仏教寺院は、20年ほど前の東海豪雨で大変な損傷を受け修復。そこからさらに20年以上の時を経て傷みが激しくなっています。壁にも亀裂が見つかり、もしまた大雨に見舞われれば中まで浸水し、内部に保管されている釈迦如来の像や仏画など、全てを喪失するという危機感を持っていました。
とはいえ、修繕が必要な建物は多々あり、ネパール仏教寺院にのみ注力できるわけではありません。これまでは、毎年の予算計画の中に修繕費用を組み込む形で資金をやりくりしてきましたが、それだけでは修繕の手が回らない建物も出てくる状況でした。

(修復前のネパール仏教寺院)
──そうした課題感の中、クラウドファンディングのご挑戦を決意されたのですね。
はい、クラウドファンディングを通して、多くの方に家屋展示の意義と現状を知っていただき、みなさんのお力を借りて修繕、管理をしていくことはできないかと思い至りました。
──これまでにも、外部にご支援・ご寄付を依頼するご経験はあったのですか?
いえ、これまで外部の方にご支援をお願いしたことはありませんでした。当館と兄弟のような関係にある博物館明治村がパイプオルガンの修復にクラウドファンディングを活用した経験があると耳にし、情報共有をしてもらいつつ、「私たちも挑戦してみようか」と実施に向けて動き出したという流れでした。
──初の取り組みとのことで、内部での反対や不安の声はありましたか?
「失敗したらどうするんだ」という心配の声は当然ありました。しかし、修繕を施さなければこの建築物は近い将来に消滅してしまうという危機感がありましたので、前向きに挑戦できるように館内で話を進めました。
クラウドファンディングに挑戦をすることで、リトルワールドを助けたいという想いを持ってくださっている方々とつながることができる。資金調達だけでなく、リサーチやマーケティングという面でも挑戦の意義がある、という点も決断を後押しする要素になりました。

(修復前のネパール仏教寺院)
──実施期間中はどのような情報発信をされたのでしょうか。
まず、関係団体やお取引先、地域の関連施設にチラシを配りながら、直接口頭で説明したり、ポスターを貼ってもらうなど、足を使った直接的なコミュニケーションを積極的に取りました。加えてSNSなどデジタルツールでリトルワールドの取り組みや日々の活動などを発信し、アナログとデジタルの二本立てで支援を呼びかけました。
アナログの場合は既に関係のある方々へのアプローチも多かったので、常に感謝の気持ちをもって、接するようにしていました。ご支援をお願いすると同時に、日ごろの感謝をお伝えする機会にもなったことはありがたかったですね。
──デジタルの情報発信で工夫されたことはありますか。
こまめな発信を心がけ、クラウドファンディングページ上の「活動報告」を含めると50回近く発信を行いました。できるだけ多くの方に楽しみながら興味を持っていただけるよう、写真や動画なども活用しました。まずリトルワールドを好きになってもらって、その上でご支援いただければという想いで、表現の仕方には細心の注意を払いましたね。
当館ではこれまでも、展示家屋や展示品の解説のSNS投稿やYouTube配信に取り組んでいて、どんな表現や発信方法がお客様に届くのだろうかと模索している最中でした。そんな中、クラウドファンディング期間中に「情報発信のトライ&エラー」ができたのは、今後の情報発信を考える上でも良い機会になりました。

(クラウドファンディングページ内 活動報告より)
──館内ではどのような体制が組まれていたのですか?
はじめは私が一人でREADYFORのキュレーターの方と打ち合わせをしていたのですが、私だけが前のめりになってもうまくいかないなと感じまして。私の所属する学芸部のメンバーの中から、クラウドファンディングに注力できるスタッフを集めてチームを組みました。
クラウドファンディングのプロジェクトが公開してからは、私以上に常時2〜3名の学芸員が支援者様へのコメント返信や活動報告に尽力してくれました。また文章校正や動画編集など、それぞれの得意を生かして学芸員総力戦でアイデアを出し合いながら動いていました。
特にSNSなどのオンライン発信に関しては若い世代の方が知見もあって、的確な意見を沢山くれたので、できるだけ若いメンバーに裁量権ごと委ねて協力してもらいました。SNSツールに強いメンバーをしっかり巻き込めたというのも、成功要因の一つだと思います。
また中心になったのは私たちの部署ですが、経理や総務、広報、営業など、関連部署の様々な人が「自分事」としてサポートをしてくれたことも大きいです。部署の垣根を越えて、多くの人が本当に頑張ってくれました。心から感謝しています。

(クラウドファンディングページ内 活動報告より)
──実際に挑戦してみて、想定外だったことや戸惑ったことはありましたか?
READYFORのみなさんと十分に事前打ち合わせができていたので、挑戦前後での大きなギャップや戸惑いはなかったように思います。1番サポートの手厚いコンサルティングプラン※ を選択していたおかげで、頻繁に分析結果をフィードバックしてもらえたり、自分たちでは見えていない部分まで細やかにアドバイスいただくことができ、安心して取り組むことができました。
しっかり伴走してもらえたことで、目標金額の500万円に対して倍以上の10,155,000円という、我々の予想を超えた着地点に到達できました。

(クラウドファンディングページより)
──資金調達以外に、挑戦を通して感じたプラスの影響はありましたか?
リトルワールドの活動を支援し、建物の存続を切に願ってくださっている方がこんなにもたくさんいるのだと、改めて認識できたことは大きな価値がありました。当館はプライベートミュージアムですので、基本的には自分たちで事業を展開し、賛同くださる方々が来館してくださることで成り立っているのですが、日頃なかなかみなさんの想いをお聞きする機会がないのが現状です。
今回、これほど多くの方々のご支援や想いを目に見える形で受け取ることができたことは、私たちにとって大きな財産で、スタッフ一同仕事をする上でとても励みになっています。来館時に「クラウドファンディング応援しました」「達成してよかったですね」などと声をかけてくださる方がいらっしゃることも本当に嬉しく思っています。
応援してくださる方々の存在を改めて認識し、活動報告や当館での竣工イベントなどの場をお借りして、感謝の想いをお届けできて本当によかったと思っています。
──クラウドファンディングがきっかけで生まれた、新たなつながりはありましたか。
修繕対象の仏教寺院は密教系なのですが、愛知県内にある密教関連のお寺さんや、ネパールにゆかりのあるお寺さんや僧侶の方が応援してくれたり、チラシを置いてくださったりしました。そこからまた知り合いの寺院や僧侶をご紹介いただくなど、思わぬご縁から予測もしなかった新しいつながりも広がりました。
──ご支援者の方々とは今後どのような関係を紡いでいきたいですか?
クラウドファンディング終了後も、工事の様子などを積極的に活動報告で発信しています。プロジェクト終了後も活動報告を通して、支援者の方々とつながりを持てていること、ありがたく思っています。
これからも、クラウドファンディングを通して得られた信頼や、つながりを活かしつつ、より親しみと魅力を感じていただけるような施策を行っていきたいと思っています。みなさまのお気持ちにただ甘えるのではなく、恩返しができるよう謙虚な気持ちと真摯な想いを忘れずに、当館の発展のためにスタッフ一丸となって尽力していきたいと、改めて思っております。

(修復工事終了間近、祈祷旗の交換作業を終えたネパール仏教寺院)
※コンサルティングプン:クラウドファンディングの各ジャンルに特化した専門チームが、戦略設計・伴走支援するプラン(https://cf.readyfor.jp/proposals?topbutton=#plan)
本記事は、2025年7月に開催された『トークシリーズ【資金調達の視点からよみとく美術館の今とこれから】vol.2 クラウドファンディングで広がるミュージアムの魅力 ― 認知拡大・来館促進・地域連携の実践事例 ―』の内容をもとに作成しました。クラウドファンディングについてもっと詳しく知りたい方、実施を検討されている方は、ぜひお気軽に下記よりお問い合わせください。
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